マンモグラフィ施設・画像評価からのお知らせ

1.ファントム画像評価(視覚評価とデジタル評価)

 マンモグラムは撮影装置が仕様基準に達していても、受光系システム・現像処理、撮影技術などによって画質が異なるものである。一定以上の画質を確保するためには、画質基準を明確にし、各施設において検証すると同時にこれを公に認証することも重要である。
  以下は、マンモグラフィの画像評価基準である。マンモグラフィはスクリーン・フィルム システムのほか、日本ではデジタル システムが多く採用されており、両システムの固有の特性もあるが、評価は可及的に共通の機器と項目を採用している。

1.ファントム画像評価(視覚評価とデジタル評価)

 評価に使用するファントムは 乳房組織模擬試料内蔵ファントム(以下 ACR 推奨ファントムと略す)と、これに 10 段からなるステップファントムを加え、以下のように撮影し、評価する。

a.ファントムとその撮影法

ステップファントムはベース材SZ-50(ウレタン樹脂)ρ=1.061 g/cm3で、
これにリン酸カルシュウムρ=0.0243 g/cm3*(N-1)を添加して、15×30×15mm大の直方体を10段としたものに、各段200μmの模擬石灰化と0.5mm厚の模擬腫瘤を貼り付けたものである(図1)。
(日本医学放射線学会推奨 京都科学製マンモステップファントムAGH-D210型、京都、日本)

ACR 推奨ファントムとステップファントムを図2のように配置する。

a-1. スクリーン・フィルム システム
  ACR 推奨ファントムの中心濃度 1.5 ± 0.15 となる条件で撮影する。

a-2. デジタル システム
  階調カーブの形状および周波数処理の設定は臨床と同一条件で撮影し 、撮影条件を明記したうえで ACR 推奨ファントムの中心濃度 1.5 ± 0.1 の濃度となるよう、ハードコピーを作成する。

b.視覚評価

b-1. スクリーン・フィルムシステム
  ACR 推奨ファントムの評価方法は「マンモグラフィを導入した乳癌検診システムのガイドライン」(乳房撮影精度管理マニュアル(改訂版)、日本放射線技術学会叢書、 1997 年)による。
  合格基準としては、 4 番目までの線維構造( 0.75 mm、 4 点)、 3 群までの模擬石灰化( 0.32 mm、 3 点)および 3 番目までの模擬腫瘤( 0.75mm 、 3 点)が検出でき、合計点 10 点以上、かつ、ファントム上に置いたディスクとファントムの乳腺濃度の差が 0.4 以上である。ディスクと周辺の濃度差 Δ Dの測定方法は、精度管理マニュアルに準ずる。
  ステップファントムは、 10 段が識別可能、かつ順次濃度が上昇(下降)し、石灰化が4段以上、腫瘤が5段以上観察されることが要求される。
  しかし、目視評価は 観察者による変動が大きいという欠点があり、これを補うものとして、デジタル評価があり、より客観的に評価可能である。

b-2. デジタルシステム
 評価方法はスクリーン・フィルムシステムと同様である。
  ACR 推奨ファントムの評価 は前述のようにディスクと乳腺濃度の差が 0.4 以上で、模擬繊維5点、石灰化4点、腫瘤4点以上を獲得する合計 13 点とする。
  ステップファントムは、10段とも認識可能であり、かつ、模擬石灰化が 4 段以上 、 腫瘤が5段以上観察されることが要求される。

c.デジタル評価

c-1. スクリーン・フィルムシステム
  ファントム画像を 適切なデジタイザ(例:VXR - 12( Vidar Systems Co. )または同等以上)により空間分解能 300 DPI ( 0.085mm 相当)以上,密度分解能 8bits/pixel 以上でデジタイズし、ファントム内の模擬物質とベースの信号および標準偏差を計測し、信号対雑音比を算出した。
  標準画像に対する各施設のファントム画像の信号対雑音比を画質の到達度とした場合、到達度 0.8 以上が合格である。これは、 101 施設のファントム画像評価の検討によって決まったものである。

c-2.デジタル システム
  ハードコピーされたファントム画像を,高性能なレーザーデジタイザ(例: LD-5500 , コニカミノルタ製 . )を用いて,サンプリング間隔 0.1 mm ,濃度分解能 12 bits ,(濃度レンジ 0.0-4.0 が望ましい)の条件でデジタル化する。このデジタル画像に対して,ファントム画像内のアクリル円板部の中心領域とその周辺の背景領域の平均デジタル値を計測し,信号対雑音比( S/N 比 ) を求め,これにより各施設の到達度を評価する。
  また、粒状性、書き込みムラ、ステップファントムの濃度プロファイルについても評価する。

図1 デジタル評価ファントム



ファントムの構成と組成
  サイズ: 15mm × 30mm × 15mm  10 ステップ
  ベース材: SZ-50 (ウレタン樹脂) 密度  1.061 g/cm3
  添加物:リン酸カルシウム   密度 0.0243 g/cm3( N-1 )
  各段に200μm石灰化と0.5mm腫瘤を貼付


図2  ファントム配置図



新画像評価基準

  1. ファントム画像評価(視覚評価とデジタル評価)
  2. 臨床画像評価(アナログ・デジタル)
  3. ポジショニング(24点)
  4. フィルムの取扱い(16点)
  5. 総合評価